砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 雅之の行く先は、最近通っている馬舎であった。
 弓の名手の雅之は、ここのところ流鏑馬の練習に凝っていたのである。
 主は、若い頃流鏑馬の名手として名を馳せた人物で、都一の弓の名手がここで練習することを誇りに思っていた。
 今日も笑顔で迎えてくれる。

「これはこれは、雅之殿。
 女性連れとは珍しい」

 主が人好きのする笑顔を浮かべる。
 そんな軽い挨拶にすら、うっかり照れてしまう雅之。

「こんにちは」

 毬は雅之が照れて言葉を失っている間に、毬は好好爺の前に顔を出してにこりと挨拶をした。人懐っこく物怖じしない笑顔で。

「おや、こんにちは。
 お嬢さん、馬を見るのははじめてかな?」

「馬?
 馬なら見たことあるわ」

 そう答えた毬だが、実際手入れの行き届いた大きな馬を目の当たりにすると、

「うわ!
 大きい馬っ」

 と、瞳を輝かせた。

 嵐山でそう大きくない野生の馬は見かけたことがあったが、このような馬を間近で目にするのは初めてだった。

「乗ってみる?」

 主の問いかけに、毬はさすがに躊躇した。

 雅之がひらりと馬に飛び乗り、「毬、おいで」と、手を差し伸べる。


 緑の風の中二人で馬に乗り軽やかに駆け回る様子を、馬の主は微笑ましく眺めていた。

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