ミックス・コーヒー
 そのまま、視線を下ろすとタライが置いてある。

「もしかして、これを風呂釜の代わりにしろと……」

 尚樹が軽蔑するような目で貴之を見つめる。

「ち、違う、違う……ちくしょー!」
 貴之は叫びながら、浴室にダッシュで向かった。



 それから数時間は、まるで戦争だった。

<彼女>の為に沸かした風呂の湯は、一度浸かっただけで濁ってしまい、変な色になったらしかった。
 結局はシャワーを使ったようだ。

 身につけていた物は全部洗濯しようとしたが、何せものすごい量だった為、一度に洗濯機には入らず、二回回すことになった。
 それでも、毛布等の汚れは落ちず、結局衣類以外は全部ゴミに出すことにした。



 やがて、彼女が長い長いシャワーを終え、居間に戻ってきた。

 先程から付けている暖房のお陰で部屋は暖かい。
 それでも、ついさっきまで彼女の体は冷え切っていたのだからと、尚樹は念には念を押す。
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