ミックス・コーヒー
 彼女は貴之のTシャツとスウェットパンツを借りて着ていたが、その上から準備しておいた毛布を着せた。

 これで、だいぶ体は温まるだろう、と尚樹は少しだけ笑みを浮かべる。

 彼の元々細い目が、更に細くなった。


「……あ、違う。まだだ」

 髪が、濡れている。

 尚樹は見つけたドライヤーを右手に、そして彼女を左手招きで呼んだ。



 一方、その頃貴之は、彼女が上がった後の浴室の掃除に苦しんでいた。

「なんで、この汚れ落ちねえんだよ!」

 それはもう、大晦日よりも大晦日らしい大掃除だった。
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