ミックス・コーヒー
「今まで……何もせずに本当にすまなかった! 私は、男として、人として……最低な事をしてしまった。君達のお母さんは何も悪くない。全て私が……」


「私が知りたかったのは、そんな事ではないです」


 美葉が、冷たい口調で河内の言葉を遮った。

「お母さんは、自殺なんですか? それとも他殺なんですか? 私は今日、それだけが知りたかった」

「美葉……」
 ミクリが心配そうに見つめる。

 河内は言葉を詰まらせていた。
 少しして、小さな息をつき、再び話し始めた。

「……自殺ではない」

 美葉は河内の目だけを見つめている。

「彼女……美鈴は、リハーサル前の楽屋で、ドアにかけられたロープで首を吊って亡くなっていた」
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