ミックス・コーヒー
「ちゃんとした恋愛なんてしたことない。しちゃダメだって、自分でわかってたから」

 ミクリは、尚樹の方を見ずに続けた。

「あたしと付き合った人は、絶対苦労する。自分でも思う。抱えてるものが重過ぎるって。あたしは、大切な人の重荷になるなんてイヤだから」

 ミクリの頬に、尚樹の温かい手のひらが触れた。

 思わず、尚樹と目が合う。

「おれは、重荷だなんて思わないよ。でも、ミクリが……そんな小さな体一つで抱え込めるわけがない」

「あたし、強いから。大丈夫」

「……手」
 尚樹が、優しくミクリの手を握る。

「あんなに震えていたのに、今は震えてない」

「それは……」

「みんな、一人じゃ弱いんだ。でも、誰かがいるから強くなれる」
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