ミックス・コーヒー

足跡

   ①

 お昼時が過ぎた喫茶店は、今日も閑散としている。
 客のいない店内では、ゆったりとした時間が流れる。

 すると、一人の客がやってきた。

「どうも、こんにちは」

 ……いや、客と呼んでいいものか。
 しかし、コーヒーぐらいは飲んでもらうつもりだ。

 沢下が、やってきた。

「久しぶりですね、沢下さん」

「そうですね、美葉さん。お元気ですか?」

「いやいや、話しかけてるのはオレですけども」
 沢下は、すぐ横にいる貴之よりも、少し離れた所にいる美葉の方を向いていた。

 美葉は、どうも、と軽く会釈する。

「あ、伊藤さん」

「まさか、今、オレの存在に気づいたわけじゃないでしょうね」
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