ミックス・コーヒー
 足も、凍りついたように動かなかったが、なんとしてでも前に。
<彼女>の方に、進まなくてはいけなかった。

 彼女の前にしゃがみ込む……が、震える足は、すぐに膝を地面につかせてしまった。
 そうでもしないと、彼の全身は全く安定性がなかった。


 
 彼女の腹部には、ナイフが刺さっている。

 そこを中心に、真っ黒な液体が彼女の衣服に滲んでいる。



 尚樹が、震える手を彼女の体に添える。
 
 まだ、なんとか温かい彼女の体温を感じることができた。

 そして、生温かいどろりとした感触が手のひらに伝った。



 ……全ての思考回路が、途絶えた。
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