君が見たいから ~ Extra ~
やがて顔を上げたとき、彼は案の定くつろいでいた。
この話はもうおしまいだ、と言うように、唯が手にした財布に目を向ける。
『こんな時間からどこに行くつもりだったんだ? 何か買い物でも?』
唯も、はたと当初の目的を思い出し、慌てた。
『そうよ! ソンウォンさん、今から何か食べたいもの、ある? あなたが帰って来る前に、準備しようと思ったんだけど……』
夫が帰ってきてしまってから焦っても、すでに遅いと言うものだ。朝といい今といい、今日は要領の悪い主婦の見本のようだと、また落ち込みそうになる。
だが彼は気にした様子もなく、唯を見てくすっと笑った。
『食べたいもの……ね。なら、わざわざ買いに行く必要はないな。もちろんあるが、それはまたあとでゆっくり貰うことにするよ。その前に……』
さっきアスファルトに投げ出したブリーフケースを取り上げると、きびきびした口調で尋ねた。
『セナは?』
『さっき寝付いたばかりよ。今日はお義母様達にたくさん遊んでもらって疲れたみたい。ぐっすり寝てるから、少しなら大丈夫』
『それじゃ、ちょうどいい。君の車のキー、今持ってる?』
お店ならそんなに遠くまでいかなくても……。
そう呟きながらスプリングコートのポケットに入っていた鍵を取り出すと、彼はそれを取り上げ、唯を引っ張るようにマンションの地下駐車場に降りて行った。