ヴァンタン
二十歳前夜
 母がずっと長電話をしている私を見ている。


気まずい。

でも無視して続ける。


平気な訳がない。


――ごめんねお母さん。

本当は言葉に出して誤りたかった。


――お母さん大好きだよ。だから許して……

祈るような気持ちで母を見た。


母は対面式キッチンのシンクの前で夕食後の片付けをしていた。

時々睨んだり、溜め息を吐いたり……

早く止めなさいと言いたそうに……


でも……
やめられないの。
だって大切な友人・雅(みやび)からの電話だもん。






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