モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…これ、いいね。」

黙ってうつむいていた
姫乃に、凍夜が声をかけた。

何が、と思って顔を上げると、
凍夜がじっと見ているのは、
昨日姫乃が絹糸で
編んだばかりの朝焼け色の
膝かけだ。

「薄くて昼寝にちょうどいいな。
…僕が使う。」

そういって、凍夜はさっさと
膝かけを持って行ってしまう。

「えぇ?待って凍夜!」

あわてて姫乃が追いかけるが、
凍夜は聞く気がないらしく、
まっすぐに自室に向かっていく。
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