モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「こ、こっちだ!!
こっちで血を流した人が
倒れてて、それを
物取りか何かが…!!」

複数の人間の気配と
男の声に、ノークスは
眉根を寄せた。

村人に、姿を見られたくない。

小さな村だ。
余所者のノークスは
すぐに何かと
問題視されるだろう。

なにより、この少女に
血を操るところを
見せてしまった。

口止めをしていないから、
彼女と村人が接触すれば
自分の正体がばれる。

瞬時に考え込んでしまった
ノークスの腕から、
少女が逃れるように
這い出した。

ハッとして、逃がすまいと
少女の腕をつかむより早く、
逆に少女の手がノークスの
腕をつかむ。

「!?」

「こっち。」

驚くノークスの腕を引いて
小さな声で少女が導く。

村人たちが教会の裏口に
到達するより先に、
二人は身を隠すように
その場を走り去った。
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