モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
少女の視線が、手から凍夜の目に移った。

少し落ち着いた顔で、問いかけてくる。

「あの、ええと…名前とか、
教えてもらってもいい…?」

…正気だろうか。

「自分を拉致した男の名前が知りたいの?」
「…。」

その、いま思い出したといわんばかりの顔は、何。

「あー…うん。そうだった…。」

本気で忘れていたらしい。

凍夜の口からため息がこぼれた。
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