モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

安息―沙羅

「…ええ。今晩は食事を
とりません。明日の
昼ごろまではこちらに
留まると、そう、凍夜に
伝えなさい。」

「かしこまりました、
マスター。」

朔夜の静かな声が、
ぼんやりとした沙羅の
頭に溶け込んで、
沙羅はゆっくりと
目を開けた。

視界に多少ぼやけては
いるが、見覚えのある
天井と人の影が見える。

その影がかがみこんで
沙羅に近づいたかと
思うと、沙羅の頭を
ひんやりした手が撫でた。

「気分はどうですか。」

優しい、穏やかな声が、
沙羅を気遣ってくれる。
< 226 / 726 >

この作品をシェア

pagetop