モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
ふと、沙羅が俯いたのが
見えて、ノークスは
ハッとした。

暗がりでもそうと
わかるほど、顔色が悪い。

必死に呼吸を整えようと
口元を押さえているが、
これはそうとう具合が
悪いのではないだろうか。

おそらく、男たちの話から、
先日喰血鬼に襲われたときの
ことを思い出したに違いない。

あの時、沙羅は特に気にした
様子を見せなかったが、
喰血鬼が人を喰う様を
目と鼻の先で彼女は
見ているのだ。

姉のこととも相まって、
精神的なショックがすでに
限界を超えていることだろう。

これ以上彼女を放置しておく
気にはなれず、ノークスは
真っ青な沙羅を抱きあげると、
静かに地主の屋敷を離れた。
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