モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

死の香り―姫乃

凍夜が食事をしなくなって、
すでに数週間が過ぎた。

その事実は、せっかくの
妹との時間さえも心から
楽しめないほど、
姫乃を落ち込ませる。

元気のない姫乃に
気を使ってくれた
沙羅への言葉は、
本心だ。

確かに、沙羅と過ごした
時間は、姫乃の心を
癒してくれた。

しかし、その程度で
あっさり晴れるほど、
姫乃の抱える問題も
悩みも小さなことではない。

ノークスは最初、姫乃が
いつも通りになれば
凍夜もわけのわからない
意地をはらなく
なるだろう、と言っていた。

ノークスの言うことは
わかっているが、
それは姫乃にとって
この上なく難しい
ことだった。
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