モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
予想外の少女の一言に、意地の悪い笑顔のままで
固まったノークスはなかなかおもしろかった。

少女のペースに振り回されそうなノークスを
今度は凍夜が無視して少女に尋ねる。

「ねぇ、キミの名前は?」

唐突な質問に、少女が少し驚いた顔をする。

「名前知らないと、話がしづらい。」

「…品が良くてしなやかな娘って意味で、姫乃。」

姫乃、と小声で繰り返す。

「よく名前負けしているって言われるけど。」

「隣国の出身?」

姫乃の話には答えず、凍夜はまた疑問をなげかける。

凍夜の名前もそうだが、意味のある文字を並べた
名前をつける風習は隣国特有のものだ。

「わたしはこの国。母が隣国チェーニの出身だから。」
「そう。」

フォークの先でサラダのソラマメを器用によけると、
姫乃が何か言いたそうにこちらを見ていた。
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