モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「僕の力なら、人間を殺すこと
なんて造作ないよ。」

「わたしだって…たとえばこの
銀食器で人間を殺せるわ。」

「吸血鬼は食事の為にたやすく
人を殺すのに?」

「…人間だって私利私欲で簡単に
人を殺すもの。」

お互いの視線が、静かにぶつかり合った。

真っ黒な、何を考えているのか読めない瞳。

「わたしは、殺せることと、
殺そうとすることは、違うと思う。」

その双眸をしっかりと見据える。

「だから、今、わたしはあなたたち
吸血鬼を怖いとは思わない。

…むしろ、どんなことが違うのか
とても興味があるし。」

思わずポロっとこぼれた本音に、
凍夜の横でノークスが理解できない、と
言いたげな顔をしたが、気にせず続ける。

「わたしが怖いと思う理由は、あなた達が
どういう人かわからないから。それだけよ。」
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