モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
…彼女からのキスは、
二度目だ。

一度目のキスは、
寝込みを襲われた上、
頬に触れるだけの
ものだった。

その時でさえ、
名残を惜しむ間もなく
離れ、心底恥じ
いっていたのに。

なのに、今、姫乃は
ためらった様子もなく
ずいぶん大胆に、
口づけている。

ぼんやりとそんなことを
考えて、何故彼女が
キスしているのかも
考える。

自分からそんなことを
おいそれとできるような
性格じゃない。


何か、理由が…。


そう、凍夜にとっては、
あまりおもしろくない
理由が、ある…はず。

口の中に広がった
血の味が、その理由を
思い出させた。
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