モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「やめて…凍夜…。」

懇願は、やはり
聞き入れてもらえず、
凍夜は変わらず
姫乃の名前を繰り返す。



姫乃、と。



そのたった二文字が、
どんな言葉よりも、
姫乃の心に
揺さぶりをかける。



ひどく高ぶった感情が、
心からあふれて
透明な雫になって
こぼれた。


「もう…呼ばないで…。」



苦しくて、たまらない。



「やっと、楽になったのに…
そんな風に、呼ばないで。
…勘違いさせるようなこと、
するのはやめて…。」

俯き、うなだれた
うなじに柔らかな
感触を覚える。

耳に、首にと、
その感触は心地よく
移っていく。

ゆっくりと顔を
あげれば、額にも
キスを受けた。
< 456 / 726 >

この作品をシェア

pagetop