モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「凍夜がおもしろがって
甘やかしたのが裏目に出たようだ。」

「い…た…。」

あいている手を彼女の首にかけ、
わざと痛みを感じるように抑えつければ、
華奢な少女はか弱い力で必死に
抵抗して見せた。

しかし、そんな抵抗ではノークスの
加虐心をあおるだけで、とても
逃げ出すことなどできはしない。

「しつけが必要ですね。
餌ふぜいがつけあがると
どうなるのか、これからきちんと…。」

「ノークス。」

「!?」

何かに気付いたらしい凍夜の
静かな呼びかけで、唐突に話を
中断されたノークスは、身の
危険を感じて素早く姫乃を手放した。

微かな痛みが手の甲を滑る。

ノークスから解放された姫乃の
手には銀食器のナイフが握られていた。

完全な油断だった。

しかも、姫乃にしてみれば首を
絞められたことで防衛本能が働き、
何とか振り払おうとした結果だった。

それでも、ノークスを刺激するには
十分な行動。
< 57 / 726 >

この作品をシェア

pagetop