モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

逃走―ノークス

玄関ホールに姿を現した姫乃を
見たノークスは、自分の後ろで
事態を見守る凍夜の様子をうかがった。

先ほどの様子からすると、彼女の
肩を持つのでは、と警戒していたのだが、
特に何かするようすはない。

凍夜から姫乃へ視線を戻すと、
彼女は物影の二人に気づくことなく、
足早に玄関ホールを横切り、
玄関のドアに手をついた。

「…どこへ行くのです?」

鍵のかかったドアを開けようと
していた姫乃は、ひどく驚いた様子で
こちらを振り向く。

「あ…。」

「ここから逃げ出さないなら、
あなたの自由と安全を保障する。
そう、凍夜が伝えたはずだが…?」

青ざめた姫乃の腕をつかみ、
無理やりドアから引き剥がすと、
姫乃は小さな悲鳴をあげた。
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