モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

義兄と義妹―凍夜

「…。」

「…。」

森の中の一軒家。

かつて姫乃が
暮らしていた家で
無言のまま
たたずむ凍夜は、
じっと目の前の
少女を睨み
据えていた。

幼い、大きな目が
瞬きひとつせずに
凍夜を凝視する
ものだから、
目をそらすことが
できない。

…というか、
目をそらせば、
負けたようで
気に入らないから、
絶対に自分からは
視線をそらさない。

そんな、姫乃や
ノークスが
この場にいたら
間違いなく
呆れるだろう
理由で、
ずいぶん長い時間
二人は見つめ
合っていた。

ノークスを探しに
来たというのに、
本人には会えず
長々と何を
しているのか。

いい加減、苛立ちが
募り始めたころ。
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