モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

晩餐―姫乃

「…できましたよ。」

明るく照らされた部屋の
一室で、ノークスが
大きな布を払った。

空中に、ふわふわした
栗色の羽毛のような
髪の毛が舞う。

床に落ちたそれを、
ノークスの従僕がせかせかと
片づけた。

「我ながら、いい出来です。」

満足げな呟きを漏らし、
ノークスが自慢げに凍夜を見る。

近くで様子をうかがいながら
本を読んでいた凍夜が
ぽつりと呟いた。

「ふぅん。いいね。」

「当たり前です。
僕の作品ですからね。
まぁ…素材の良さも
否定はしませんが。」

二人の称賛に、姫乃は
少し頬を赤らめた。

「…ありがと。」

昨夜、ノークスから逃れるために
ばっさりと切ってしまった
髪の毛は、肩より少し長いところで
きれいに切りそろえられた。

その長さにあわせるように、
前髪や左右も多少いじられている。
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