光のもとでⅠ
 少し丸っこいフォルムのカップはカフェボールと呼ばれるもの。
 とても大きなカップだけれど、それ以外のものが目に入らずそれに決める。
 カウンターにふたつのカップを並べると、その大きさに唯兄が目を瞠った。
「……だめ?」
「……いや、ダメじゃないけど。三百五十? いや、もっと入りそうかな?」
 言いながら、「これだけあったらたっぷり話ができそうだ」と笑った。
 たくさんのお話――。
「……そんな不安そうな顔をしなくていいよ」
 ツン、と頬をつつかれる。
 お湯が沸いたことをケトルが知らせると、
「私がやるっ」
 と、咄嗟に手を出したら熱かった。
「リィっ、すぐに冷やすっ」
 ザーッと音を立てる流水に人差し指と中指を晒す。
「そりゃ、そのまま触ったら熱いよ」
 唯兄は言いながら私の右手を握っていた。
「ごめんなさい……」
「いや、謝らなくていいけど気をつけないとね? 女の子なんだからさ」
 その言葉はとてもあたたかかった。
 言葉に温度があるとしたら、きっと四十度。
 熱くもなくぬるくもない、ほっとできる温度。
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