光のもとでⅠ
 電話の相手はというと、娘と変わらないことを延々と話し続ける。
 つまり、夏休みからではなく、今度の期末考査から勉強を見てもらえないか、と。
 親を通さずに直談判なんて何を考えているんだか……。
 さて、父さんに渡す前に言質だけは取っておくべきだろう。
「おかけ間違いではありませんか?」
 その時点で父さんに視線を投げると、面白い、とでも言うような顔をした。
『かけ間違いなんてしませんよ。こちらにはきちんと藤宮司、と登録してある番号へかけたのだから』
 バカが――。
「えぇ、おかけ間違いではなかったようですね」
 自分も性質が悪い筋書きに加担してしまうあたり、父さんの子だと思う。
 そこまで答えてから父さんに携帯を渡すと、兄さんがボールペンを父さんに渡した。
 父さんはボールペンの芯を出す仕草をすると話し始めた。
「お久しぶりです、柏木さん。不肖の息子の携帯へお電話とは何用でしたか?」
 父さんはクローゼットに身体を預け、嬉々として話し始める。
『ふっ、藤宮さんっ!?』
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