光のもとでⅠ
 知らない人間の前では伏し目がちな翠の目が、マスカラとなんとかって器具でパッチリとさせられていて、まるで人形のような目をしていた。
 しかも、頬は紅潮してるかのように化粧を施され、いつもは血色の悪い唇まで赤く熟れた果実のようで……。
 こんなに飾り立てたら男がどんな目で翠を見るか、想像に易いなんてものじゃない。
 あのときばかりは嵐を軽く恨んだ。
 なのに、翠ときたら自信なさそうな顔をしてるし――。
「だいたいにして、なんで姫になんて選ばれるんだよ……」
 球技大会の日、翠は競技には参加せずずっと応援席にいたはずなのに。
 うちの生徒は抜け目がない、と真面目に思った。
 ――俺でも気づいたのだろうか。
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