光のもとでⅠ
「ダメでした?」
「いや、緊張しすぎててちょっとかわいそうだから」
「なるほど」
 部屋に入ると蒼樹はすぐ彼女のもとへと行き、隣に腰を下ろすと彼女を肩ごと抱き寄せた。
 そして、彼女の肩を労わるようにさする。
 自分がそんなふうにできたら良かったのにな……。
 俺はこの期に及んでもそんなことを考える。
「先輩の話を一緒に聞こう?」
 コクリと頷く彼女を確認してから、俺は口を開いた。
「翠葉ちゃん、俺は今でも変わりなく君が好きだ。本当に、結婚したいくらいにね。そのくらい大切に想ってる。……できれば抱きしめたいしキスもしたい。それ以上のこともしたいよ。それが本音。でも、今の翠葉ちゃんに求めるべきことじゃないのがわかった。……嫌悪されるかもしれない。でも、今まで、俺は体以外の付き合いをしてきたことなくてね、こういうのは初めてなんだ。だから、距離の取り方がつかめなかった。それで君に無理をさせた」
 彼女は俺の発する言葉をひとつひとつきちんと受け止めるように、俺から目を逸らさずに聞いている。
 ……蒼樹の存在はやっぱり大きいな。
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