光のもとでⅠ
 私が一緒だから、だから極力匂いのしない食べ物がオーダーされたのだ。
「あのっ、私、病室へ戻るので、楓先生はきちんとご飯食べてくださいっ」
 車椅子を自分で動かそうとしたら、後ろに置かれていた本の山を崩してしまった。
「ごめんなさいっ」
「翠葉ちゃん、落ち着こう?」
 車椅子のストッパーをかけられ、楓先生が真正面に座り視線を合わせてくる。
 どうしよう。また、涙が出てきた……。
「翠葉ちゃん、お昼ご飯を一緒に食べようって誘ったのは誰?」
「……楓先生」
「そう、俺が一緒に食べようって言ったんだよ? だから、翠葉ちゃんが悪いことなんて何もないでしょう?」
「でも……」
「失敗しちゃったなぁ……」
 と、先生は床に座り込んだ。
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