光のもとでⅠ
 当の本人はそんなことを覚えてもいない。
 そのとき一緒にいたという司から会話の内容を一通り聞いたものの、どうして翠葉が自分を責めて「消えてしまいたい」と口にしたのかはわからなかった。
 さて、これをどうやって桃華に伝えたらいいのだろうか。
 ソファに腰掛け、リダイヤルを呼び出し発信する。
 すぐに、『はい』と声が聞こえた。
「連絡が遅くなって悪い……」
『いえ、大丈夫です。それより翠葉は……?』
「ICUからは出た。でも――」
『でも……? 面会謝絶なんですか?』
 少し硬質な声が返ってくる。
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