光のもとでⅠ
「悪い、頭貸してくれない」
『……あんた、藤宮司よね? 何寝とぼけたこと言ってるのよ』
 一言でも二言でも言い返したいところだけど、今はやめておく。
「寝ぼけてないし冗談でもない」
『そうね、藤宮司から冗談が聞けた暁には雹でも降るわね』
 どこまでもペースを乱さず、いつもどおり嫌みの羅列が返ってくる。
 たぶん、人選は間違えてないはず……。
『で、この私に頭貸せってなんなのよ』
「……どこから話したらいいのかわからない」
 翠が記憶を無くしたことは簾条と佐野は知っている。
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