光のもとでⅠ
『じゃ、シンプルにっ』
 蔵元さんは再度ビシ、と立った。
『蔵元森です。お加減が少しよろしくなられてからお見舞いにまいります。少し、何もかも横に置いて治療に専念されてください』
『はい、オッケーイ! いいもの撮れた!』
『おまえ、それちゃんと編集してから見せるんだろうな?』
『え? このまま全部見せるよ? あったりまえでしょ! こんな面白いもの独り占めしたら罰が当たっちゃうもん。じゃ、お先に失礼しまーす!』
 そこで撮影は終了。
「蔵元さんってさ、普段は硬派とか堅物とか言われてるんだけど、いじると意外と面白いんだよ」
 唯兄は思い出したかのように笑う。
「健康祈願にてるてる坊主はないよね? 俺、カメラ落とすかと思った」
 それは確かに。
 てるてる坊主、と口にしてから考え込んでしまった蔵元さんを思い出し、笑ってはいけないと思いつつも笑ってしまう。
 そんな話をしているところへ、お母さんと蒼兄、それから相馬先生がやってきた。
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