光のもとでⅠ
「そうだなぁ……。でも、これは知り合ってなくても知ってたと思う」
「どうして……?」
「蒼樹がね、会うたびに翠葉ちゃんのことをペラペラペラペラ喋っていくんだよね。どうしようもなく翠葉ちゃんがかわいいみたいでさ。だから、数年にわたって情報は蓄積されていて、翠葉ちゃんに初めて会ったときも、初めてって感覚はなかったよ」
 蒼兄……人のいないところで何を話してくれてるのだろう。
「こんな会話も前にしたことがあるんだ。記憶がなくても同じ反応をするね」
 秋斗さんはどこかほっとしたような笑顔になる。
「翠葉ちゃん、手帳を持ってるかな」
 秋斗さんに訊かれ、サイドテーブルの引き出しから取り出した。
 それを開くと、
「あれ? この写真……」
 挟んでいた写真を見られてしまう。
「きゃっ、それは――それは……えと、なんで持ってるのでしょう?」
 咄嗟に慌ててしまったものの、入手経路には全く心当たりがない。
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