光のもとでⅠ
 私はさっきから呆然としていて一言も口にできないというのに、秋斗さんはどんどんいつもの調子を取り戻す。
「それとね、もう一度忠告しておくけど、男は逃げられると追いたくなる本能が備わっているんだ」
 不意に右肩を抱かれ、「え?」と口にした瞬間にキスをされた。
「こんな簡単な手に引っかかっちゃうから心配なんだ。……俺、翠葉ちゃんの"初めて"は全部もらうつもりでいるから。俺に陥落させられる前にほかの男に奪われないでね」
 不意打ちのキスをされただけでも頬が熱くなる。視線を合わせてしまったとなればさらに上気する。
 言われていることの意味は半分も理解できなかったけれど、恥ずかしくてすぐに視線を芝生に逸らした。
「さ、家まで送るよ」
 立ち上がった秋斗さんに手を差し出された。
 その手を前に戸惑う。この手は取っていいのか――と。
「翠葉ちゃん、断れようと何されようと俺の対応は変わらないよ。だから、この手を取って」
 有無を言わせないような何かがあって、私はすんなりとその手を取ってしまった。
 そして次の瞬間には後悔をする。
 どうしてって、それは――引き上げられるままに立てば目の前は見えなくなり、なのに抱きしめられているのはわかるから。
 私が眩暈を起こすとわかっていての行動。
 秋斗さんってこんな人だったっけ……?
 思いながら視界を取り戻す。
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