光のもとでⅠ
 家の前に着くと、一度エンジンを切り荷物を玄関の中まで運んでくれた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。でも、見送りはいいよ」
 それだけはどうしても受け入れられなくて、玄関を出ようとした秋斗さんの後ろに続く。と、急に立ち止まられ、秋斗さんの背中にぶつかってしまった。
「ごめんなさ――」
 額を押さえようと上げた右手を取られてそのまま抱き寄せられる。
「今日の翠葉ちゃんは人目に触れさせたくないんだ。本当はね、このまま攫っていきたいくらいなんだよ」
 と、唇を塞がれる。
 それは藤山でされたキスと同じものだった。
 でも、そのときよりも長く感じる。
 しだいに体の芯が熱くなる。
 唇が放されたときには息が上がっていた。
「翠葉ちゃん、キスのときは鼻で呼吸してね」
 秋斗さんはいたずらっぽく笑う。
「今回は俺にいたらなかった部分があって無駄に翠葉ちゃんを傷つけてるから一端引く。でも、次に返事をもらうときはいい返事しかもらうつもりはないから」
 と、そのままドアを出ていってしまった。
 玄関に取り残された私は何もできずに座り込む。
 ――今回は俺にいたらなかった部分があって無駄に翠葉ちゃんを傷つけてるから、って何?
 もしかして雅さんと会ったの知られてる……?
 訊かれないから、司先輩が言わないでいてくれたものだと思っていた。
 私はそのまま動くことができず、しばらくぼーっと玄関のドアを見つめていた。
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