光のもとでⅠ
 翠葉は律儀にも身体を起こし、「先日はお電話で失礼しました。御園生翠葉です」と挨拶をする。
 そんな丁寧に挨拶してやらなくていいわよ、と言いたい自分を抑えつつ、
「おう、躾の行き届いた嬢ちゃんだな。どっかの姫とは違うなぁ?」
 自分を振り返るその面が気に食わない。
 棘だらけの言葉を返してやろうと思ったとき、大あくびをしながら昇が入ってきた。
「相馬~……着いたら連絡入れろって言ったろ?」
 昇が睨むと、相馬は立ち上がり、「久しぶりだな、相棒」とふたりは仲良さ気に肩を組んだ。
 無駄に身長が高くてなおのことムカつく……。
「昇っ、聞いてないっっっ」
「あれ? 言ってなかったかぁ?」
「聞いていたら断ってるわよっ」
 今日は厄日だろうか……。
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