光のもとでⅠ
「ないでしょう?」
 ないといえばない……。
「手を伸ばしてみたら? わかるまで何度でも。わからないのが気持ち悪いのでしょう?」
「あぁ、それ……。把握ができなくて気持ち悪い」
「人はハナほど単純じゃないわ」
 言うと、母さんはハナを抱き上げた。
「もっとも、ハナが何を考えているのかは三者択一だからわかるだけ! ハナはご飯が食べたいか眠いか遊んでほしいか、それだけだものね」
 正面に抱き上げられたハナは、母さんの言葉に答えるように口もとをペロリと舐めた。
「いくら本を読んでも翠葉ちゃんのことは書いてないわ。翠葉ちゃんの考えが知りたいなら、気持ちを知りたいなら、翠葉ちゃんとたくさん話して読み解かなくちゃね」
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