光のもとでⅠ
 色んな意味で涙が出そうになった。
 司が彼女の側にいることも、司を大切だという彼女にも。
 それから、彼女が俺とも時間をかけてもとの関係を築こうとしてくれていることにも――。
 彼女が伝えようとしてくれているすべてに泣きそうになった。
 彼女は俺を避けない。
 彼女は俺をまた受け入れてくれる。
 今、俺がどれだけ嬉しいと思っているか、きっと彼女は知らない。
 あの日ももう二度と話してもらえないかもしれない、嫌われるかもしれない――そう思って十階へ連れていったんだ。
 俺はそのときから一歩も前には進めてなかったんだな……。
 仕事を放ったらかしにして山に篭って、司に連れ戻されて彼女に会う機会をもらっても、結局俺はそこから動けずにいたんだ。
 彼女に近づきたい、彼女の側にいたい、彼女に許されたい――。
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