光のもとでⅠ
「もしかして、今の藤宮司?」
 すでに姿のない階段を桃華さんは凝視していた。
「ん? うん。ツカサと昇降口で一緒になったの。もうね、ひどいんだよ? 血圧が下がったらすぐに座れとか、図書棟に移動するときは海斗くんか桃華さんと一緒に行けとか……」
 言いながら教室のドアを開けると、まだ教室には誰もいなかった。
 クラスメイトがたくさんいて賑やかなのも好きだけど、この整然と並ぶ机を見るのがとても好き。
 それから、午後の西日が入る教室も。
「藤宮司、喋るようになったわね……」
 ぼそり、と桃華さんが言う。
「あのね、夏休み中に言われたの。思ってることを話せって。私が話すように心がけていたら、ツカサも同じように話してくれるようになった」
 桃華さんは一瞬だけフリーズして、次の瞬間にはにこり、ときれいに笑みを深めた。
「夏休み中に何があったのか、しっかりみっちり報告してもらおうかしら?」
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