光のもとでⅠ
「ほら、隠さないで言うっ」
「……ここのところは少し立ってるだけでも眩暈起こすようになっていて……」
「じゃ、そういう危険因子はとっとと排除。ステージの上で倒れたら危ないもの」
 そう言って、茜先輩は楽譜の端にメモを書き込んだ。
「翠葉ちゃんの歌にはピアノ伴奏がつくものが多いから、たいていは私が一緒にステージに上がる。姫の協演っていう名目も立てられるからね。距離が近ければ写真も撮りやすいし……うん、舞台セッティングを変えてもらおう」
 茜先輩は携帯を取り出すと、リダイヤルから番号を呼び出した。
「海斗? 翠葉ちゃんの曲、バンド形式じゃないのは私のピアノ伴奏になってるじゃない? それ、歌う立ち位置変更。ピアノの前にふたりで座るから。あと、ツカサとのデュエットのときにも翠葉ちゃんには椅子を用意して。うん、小道具さんに通達よろしく」
 サクサクと話を進めて通話を切った。
 準備は各所で詰めに入っている。
 どうしてこんなに急ピッチなのかというならば、紅葉祭の前にはしっかりきっちり中間考査があるからだ。
 九月末までには粗方決めてしまい、十月は最終調整や実際のものづくりに入るのだという。
 学園祭ってなんだかすごい――。
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