光のもとでⅠ
 図書室での私の仕事は、上がってきた会計報告書のチェック。
 そして、いたるところで声をかけられては計算機扱いをされる。
 そんな日々にも慣れ始めていた。
 ツカサに「翠」と呼ばれてファイルを渡されると、中身はたいてい「計算しておいて」の内容。
 それと同時に私もツカサにファイルを渡す。
 私が渡すものは資料がどこにあるのかわからなくて処理が遅れている書類たち。
 要はツカサをインデックス扱いしているわけで、お互いどっちもどっちだった。
「司も翠葉ちゃんも、言葉を簡略しすぎじゃない?」
 そう言ったのは同じ会計の優太先輩。
「必要以上に喋りたくない」と答えたのはツカサ。
「喉が少し痛くて」と答えたのは私。
「くっ……そりゃそうだよね? ふたりとも毎日歌の練習させられてるし」
 その言葉に私とツカサは顔を見合わせなんとも言えない表情になる。
 今私たちが口を開いたら、間違いなくこの一言しか出てこないだろう。
「やらなくていいならやならい」――。
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