光のもとでⅠ
 すると、ゲートが開き始めた。
「秋斗さん……それ、普通の携帯に見えるんですけど、何か違うモバイルだったりします?」
「普通の携帯。翠葉ちゃんと同じ機種だよ」
 と、携帯を持たせてくれた。
 まだ秋斗さんのぬくもりが残るそれは、本当に私と同じ機種の携帯で――。
 なのに、秋斗さんが手に持つと違う端末のように思える。
「ちょっと仕掛けをしてるだけ」
 秋斗さんはいたずらっぽく笑った。
「春にもね、ここでまるきり同じことを訊かれたんだ」
 そう言って車を発進させた。
 ゲートの向こうには適度に整備された小道が続いていた。
「ここはまだみたいだけれど、もう少し奥まで行けば、多少は紅葉しているんじゃないかな」
「……きれいなところですね」
 新緑の季節はさぞきれいだったことだろう。
 こんなすてきなところに連れてきてもらったのに、私は忘れてしまったのね――。
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