光のもとでⅠ
 翠は俺が迎えにくることをすっかり忘れていたのだろう。
 別に海斗たちと行動しているのなら心配は最小限で済むわけだけど、ここまで迎えに来てそれもどうかと思う。
 だから待機。
 教卓の前に座る男が俺を見て翠を見た。そして何か話しかけているようだ。
 受け答えをする翠の背後で、簾条が海斗に隠れて笑っていた。
 しかも、俺とそのふたりを交互に見ながら。
 残念ながら、後ろ姿の男を読唇することはできない。 
 翠は海斗や佐野を見てはその男に返事をする。
 海斗たちを振り返ったことから、角度が微妙に変わって唇を読むことはできなくなった。
 とくに髪の毛が邪魔をして。
 そんな状態を数分も見ていればイライラしてくる。
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