光のもとでⅠ
「何が原因だった?」
「健康じゃないから……。それに子どもなんて産めるかわからないし――」
「それ、誰かに何かを言われたからじゃないの?」
 あ――。
「雅さん……」
「それが怒っている本当の理由だよ」
「でもっ、ちゃんと自分でも考えましたっ」
「何を?」
 訊かれて視線をシーツに落としてしまう。
「……秋斗さんならもっとすてきな人が似合うだろうなって。私は何かをしてもらうばかりで何も返せないから……」
「翠葉ちゃん、そんなことを言うともっと怒るよ?」
 その場の空気が変わったのがわかった。
 一瞬にして体に力が入る。
「俺が好きなのは翠葉ちゃんでほかの誰でもないんだけど? その俺に、ほかの誰かが似合うっていうのかな?」
 低く、何かを抑えているような声だった。
「……だって、そのほうが幸せなんじゃ――」
「翠葉ちゃん、その先は言わないでくれる?」
 決して声を荒げたわけでもないのに、すごく怖かった。
 恐る恐る秋斗さんの顔を見ると、今まで見たことのない顔をしていた。
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