光のもとでⅠ
「そしたら翠葉はどうする?」
「赤いお花を連れて帰りたい」
「それはどうして?」
「だって、私はその赤いお花が好きなのでしょう? それなら一年草でも大切にその子を育てたいもの」
「そうだろ? 赤い花を黄色い花には替えられないだろ?」
「うん」
「つまりはそういうことなんだよ」
「……え?」
「今の話で翠葉を秋斗先輩に置き換えて、赤い花を翠葉に置き換えてごらん」
 私が秋斗さんで、赤いお花が私……?
 秋斗さんは赤いお花、私が好きで、私は秋斗さんが好きだけど、黄色いお花――違う人を勧めるの……?
 そしたら私は黄色いお花は赤いお花の代わりにはならないと思ったのだから――。
「――私の代わりはいない……?」
「そう。自分の好きな人に自分じゃなくて違う人のほうが似合うって言われたらショックじゃない?」
 顔を覗き込むようにして訊かれた。
「あ――」
「わかればよし」
 と、頭を撫でられる。
「蒼兄、どうしよう……?」
「……だいぶ落ち着いたな。どうする? 秋斗先輩と話すか?」
「……ちゃんとお話したいけど、なんて話したらいいのかわからないの」
「そうだなぁ……。まずは傷つけちゃってごめんなさいってところだろうけれど、自分で言葉を探したほうがいいだろうな」
< 405 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop