光のもとでⅠ
「秋斗お兄ちゃんずるーい……」
 拓斗くんが不満そうに文句を言うと、
「拓斗は拓斗のお姫様を探しなさい。じゃ、俺は仕事に戻るから。美波さんはゆっくりしていってください」
 と、立ち上がり様に額へキスを落とされる。
「翠葉ちゃん、あとでね」
 私は呆然と秋斗さんの後ろ姿を見送った。
 ……何? 本当になんだったの!?
 首をさすりながら、
「美波さん、今のなんだったんでしょう?」
 訊くと、
「あら、わかってないの?」
 と、きょとんとした顔で訊かれる。
 わかるも何も――。
「お姉ちゃん、キスマークつけられたんだよ」
 拓斗くんがにこりと笑って教えてくれた。
 き、キスマークっ!?
 思わず髪の毛の上から首を押さえる。
「翠葉ちゃん、男の人と付き合ったことは?」
「……初めてです」
「まっ……それで秋斗くんの寝室なんかにいるのっ!?」
 かくかくしかじか、この部屋に来ることになったいきさつを話すと、
「翠葉ちゃん、しっかり避妊はしなさいね」
 言われて心臓が止まりそうになる。
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