光のもとでⅠ

24

「わかるか?」
 先生は俺の目を見ろ、と言わんばかりに視線を合わせてくる。
 涙は、目の表面張力なんて関係ないみたいにボロボロ零れるから、視界は意外とクリアだった。
「周りの人間は、おまえがつらそうにしているのを見たくないから、おまえが倒れるのを見たくないから止めるんだ。おまえが大切だから止めるんだ」
 そんなこと、わかってる――。
「先生……私、この身体と十七年の付き合いなのよ? ……少しつらいくらいじゃ顔になんて出さない」
「くっそ――全然わかってねぇなぁっ。じゃぁ、顔に出るとき、仕草に出るときはどんだけつらいんだって話だろうがっ。がんばりかた間違えてんじゃねぇっっっ」
「っ……わかってる、わかってるけどっっっ――」
 先生、倒れなくても心がつらい。すごくつらい……。
 行動をセーブすると必然的に私の感情にもリミッターがかかる。
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