光のもとでⅠ
「蒼くんもたまには一緒に葛湯飲みましょう? 甘さは控え目にしてあるわ」
 トレイをローテーブルに置き、私が身体を起こすと、すかさず背中に枕を入れてくれる。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
 栞さんはいつもと同じように接してくれるけれど、私はいつもと同じように会話ができなくて、蒼兄も同じなのか、なんだかとても気まずい空気だった。
「蒼くんも翠葉ちゃんも、今日のことはもう終わり。これで引け目を感じて幸倉に戻られたりしたらたまらないわ」
 栞さんが困った顔をして言う。
「翠葉ちゃんの体調が少しでも安定してくれるのが私の願い。だからがんばろう?」
「……はい」
「蒼くんも、ひとりで背負おうとしないこと。いい?」
「……はい」
「さっき碧さんから連絡があったの。二十一日に帰ってこれるみたいよ」
 二十一日火曜日――。
< 4,791 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop