光のもとでⅠ
「そこ使っていいから、顔だけ洗っていってね。何事かと思われるのは避けられないだろうけれど」
 彼女の目は明らかに赤いし、この部屋に入ってから三十分近くの時間が経っていた。
 ここから出てきた君に誰もが不思議そうな視線を向けるだろう。
 そのとき、君はなんて答えるのかな。
 きっと、うまいこと繕うんだろうね。
「あぁ、新しいタオルは引き出しに入ってるから」
 彼女は無言で簡易キッチンのコックを全開にしてザーッと水を出す。
「先生、ここ、お湯も出る?」
「出るけど?」
 しばらく彼女の行動を見ていると、お湯を顔に浴びせては水を浴びせ、ということを数回繰り返した。
 顔を拭き終わった彼女が振り返ると、キッ、と目を吊り上げ理由を述べる。
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