光のもとでⅠ
「だいたいにして、その日までに割く時間や、その日に割かれる時間すべてが無駄に思えてならない」
「あぁ、なるほど……。それもとてもおまえらしい理由だな」
「もっとも、その間ずっと笑顔の仮面を貼り付けた湊を見ていられるのは楽しいかもしれないが」
 静が口端を上げて愉快そうに笑った。
 なんていうか、こいつはどこまでも藤宮静という人間そのものだった。
「湊先生はそれでいいって?」
「あぁ、諸手を挙げて喜んでいたさ。これ以上、招待状の宛名書きはしないとな」
 その言い分に俺と静は笑う。
 だって、こいつひどいよ。
 自分だって表向きの披露宴なんてやるつもりさらさらないくせに、それをやらない条件として、会長のバースデーパーティーの招待状の宛名書きを全部湊先生にやらせてるんだから。
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