光のもとでⅠ
 ……あの時間に帰ったとして、翠はどうやっても九時に作業を開始できないだろう。
 そう思いながら、以前から気になっていた臨床データに目を通していた。
 九時半を過ぎた頃、待っていたメールがようやく届く。
 それは翠がリトルバンクにアクセスした知らせ。
 本文はなく件名のみ。「作業スタート」と記される。
「やっと始めたか……」
 今日ばかりは時間内に作業を終わらせることはできないだろう。
 十時半にはリトルバンクから締め出される。
 許された時間はすでに一時間を切っていた。
 三十分遅れだったとしても、俺が手伝えば終わる分量。
 または、俺が手伝わなかったら間違いなく明日に残る分量。
 俺は自分のパソコンと携帯を手に部屋を出た。
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